ご好評を頂いております、「星の瞳の狩人証」
先日再生産が始まったこともあり、製作秘話・メイキング記事を公開いたします。
星の瞳の狩人証、ご予約はこちらからどうぞ。
初回生産分の受付開始は2021年の11月ですが、皆様にお届けする準備をするまでに約2年の歳月が流れていました。
狩人証本体の造形を担当したのは造形作家・大畠雅人さん。
さすが『ダークソウル』のリングコレクションシリーズ、『Bloodborne』の狩人証を多数手がけている大畠さんです。制作着手から数週間、2020年初頭にはすでに原型が完成していました。
ゲーム内グラフィックをよく見ると、石座は円が交差した形状であることが分かります。ここは造形に関して原田がこだわったポイント。純粋な円より、左右非対称であることがアクセントにもなっていて、魅力的な箇所だと思います。
「星の瞳の狩人証」製作にあたり、難航を極めたのは中央の瞳を模している部分です。
宇宙が奥へ広がるような、『Bloodborne』のコズミックホラーな世界観を象徴する魅力を放っています。
「瞳をどのように表現するか」
これこそが最大の課題であり、2年という歳月のほとんどをそこに費やしたと言っても過言ではありません。
■ラブラドライト案
偏光するという性質と深みのある色合いから、ラブラドライトという天然石を使用する案で開発が始まりました。
ラブラドライトで瞳の部分を表現。詳しい方なら、この時点ではコストのことを一切考えていないんだな、と思われるのではないでしょうか。
「いかに再現度を高められるか」という点こそ重要なので、コストのことはいったん見て見ないふりをします。
しかしラブラドライトだと色味は良くても、星のような表現ができていないですね。
ラブラドライトのみでは加工時に割れることが多く、再現度以外の点でも難がありました。
次のステップとして、色味はラブラドライトで再現し、星を表現したテクスチャを加えた水晶を貼り合わせるという二層構造を検討。
石を摺り出している様子がこちらです。(製品も、すべてこの方がひとりで水晶を磨っています!)
山梨にはたくさんの鉱山が存在し、水晶が産出されることで有名です。(現在は採掘が禁止されているそうです)そういった土地柄から、水晶研磨と貴金属工芸の技術が発展。今でも宝飾産業が盛んなのです。
星のテクスチャを再現する為に星を描き込み、ラブラドライトを重ね合わせたもの。検討用とはいえまったくいまいちです。
水晶側にテクスチャを加えるというアイデアは最終仕様にも受け継がれていることから、一歩ずつ前進していることが分かります。
原石を購入し、2mmの厚みで板状に切り出してもらいました。
割ってみないことには色味が分からず、使える部分がどれほどかわからないということがよくわかりました。
ご覧の通り、天然石故に1つとして同じものがありません。個体差が大きすぎて、一点ものならまだしも、大量生産のライセンス商品という製品コンセプトからは離れてしまいます。
ラブラドライトを使用するという案にはこだわりがあり、粘ったのですが採用を見送らざるをえない、という判断になりました。
■黒蝶貝案
天然素材という括りでは黒蝶貝を使用する案もありました。貝殻の内側を切り出しています。
美しく偏光しますが、透明度がないので不採用です。薄切りすれば透けるかもと思って作ったのに、全然透けませんでしたね。
物としての美しさと、再現度の高さはまた別の問題であり、「瞳をいかにして再現するか」という課題の難しさを痛感するのでした。
■プラ板塗装案
プラ板をメタリックブルーで塗装し、水晶を重ねる方法をということもテストしていたようです。いま振り返るとやけくそ感がありますね。試行錯誤の一例として掲載しておきます。
■偏光フィルム案
偏光フィルムと水晶を重ねることで、なんとなくいけそうな感触がありました。
理想には遠いけど、雰囲気がいい。水晶は純粋な透明でなく若干とろみがあって、効果的だなとあらためて感じました。
などといった試行錯誤を重ね、納得のいくものができないまま月日が流れてゆき……
最初から開発につきあってくれていた富士吉田市のアクセサリーメーカー・(株)シノンさんとのやりとりで、ある日「これは!」という試作品が誕生しました。
「プレシード」という加工法を使ったサンプルがすさまじく良かったのです。
■プレシード加工案
「プレシード加工」は、シノンさんが独自開発した特殊技術。金属に立体感を持たせる加工ができます。通常金属のメッキ加工は単色ですが、プレシード加工ではグラデーションを施すことも可能です。
同シリーズの『カインの狩人証』にも採用され、中央の獣や赤茶色の部分に使われています。「金属へのプリント・印刷」というとイメージしやすいかもしれませんが、その域を超えて立体的で複雑な表現が可能で、今回の瞳の表現にも効果的なことがわかったのです。
プレシード加工を最大限に活かすため、原型を納品してからおよそ2年を経て大畠さんに形状の修正を依頼。どのように修正したかは企業秘密で申し訳ないですが、ついに瞳の内側の奥行きを表現することができました。
最新技術のプレシード加工と、熟練の職人さんによる手摺りの水晶で、この見たことのない表現に辿り着くことができました。
2年という開発の試行錯誤を経て、完成した「星の瞳の狩人証」。自信を持ってお届けできる製品になっています。是非ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
星の瞳の狩人証、ご予約はこちらからどうぞ。
∴桑原∴