Bloodborne / シルバーコレクション:撃鉄の狩人証について

2022-06-28

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本日はシリーズ第6弾。「撃鉄の狩人証」について振り返ります。

■撃鉄の狩人証

 

 

複雑な機構を擁する仕掛け武器ばかりを生み出す「火薬庫」の源流、オト工房が発行した狩人証。

入手によって取引可能になるアイテムも、爆発金鎚や時限爆弾など、技術とクセが盛り込まれたものばかり。まさしく異端の工房です。

 

見慣れぬ形状で、モチーフがなにか掴み取れません。(後に判明します)

印象的な錆色の風合いも、再現するうえで、かなり重要なポイントでしょう。

 

狩人証シリーズの原型は、全て大畠雅人さんが担当。

今回も、「これだ!」と思える形状の捉え方。大畠さんはほんとうにすごいです。

 

ところが、我々は大きな思い違いをしていたのです。

 

■形状の再考証

 

 

 

撃鉄の狩人証には、鉤型の突起があります。

 

 

初期の原型データを確認すると、この突起を別パーツとして造形しています。鋳造の都合ではなく、我々はこの突起のことを「撃鉄」を表現した造形なのだと勘違いしていたからです。

 

(例に出す銃のクセが強くてすみません。)

唐突ですが、フリントロック式のピストルです。

もうお気づきの方もいらっしゃるでしょうか。わかりやすく拡大してみます。

 

赤線で囲った部分が、この銃の撃鉄です。この形、一目瞭然ですね。

「撃鉄の狩人証」は、それそのものが、撃鉄をかたどっていたのです。
原型の監修チェックでこの部分を指摘され、本商品のディレクターを務めた原田は「自らの無知を深く恥じた」そうです……。
左:試作版 右:製品版の鋳造サンプル

 

これを踏まえ、本体と突起を一体化しました。試作版と製品版の、最大の違いです。
こうして解釈も正しくなり、「ゲーム中グラフィックを再現した立体物」まではたどり着くことができました。
しかし、次の大きな課題が浮上してきました。
アクセサリーとして、どうまとめるか?
本体につながるチェーンをどう処理するかという点、これが簡単そうに思えて予想外の難敵でした。

 

■量産化困難な構造への挑戦

 

 

まずはゲーム内グラフィックをもとに、描かれている構造を推測をまじえつつ読み取ります。

 

原田による図解。
確認できた構造は上記画像の通り。
「大きいカンⒶ」に、小さいカンを二つ通す。その状態で、上部の突起に通してかしめる。
 
赤丸部分が「大きいカンⒶ」

 

構造そのものはシンプルではあります。
が、あまりに小さすぎて現実的ではありません。
チェーンを取り付けるためのカンを、そのままペンダントに付けるとこうなります。
 

……これはまったくだめですね。

サイズ感といい、取ってつけたような見た目といい、あまりにも不自然です。
どのようにして解決したか。
図解した構造そのものを、造形の時点で盛りこむアプローチをとりました。
試作版のような野暮ったさはなく、自然にまとめることができたと感じています。
細かいうえに、チェーンによって構造が伝わりにくいと思いますので、試作版同様、ペンダント部分だけ見てみましょう。

 

 

小さいカンとチェーンの1コマ目を模した造形を、斜めに配置。首から下げた時の状態を、疑似的に再現するイメージです。
構造に関する指示書を見ると、確認しやすいと思います。
試作版とはほんのすこしの違いながら、格段によくなっているのを感じていただけるでしょうか。元絵の雰囲気と、アクセサリーとしての美観を両立できた自信作です。

 

■錆色表現の追求

 

印象を大きく左右する、錆色の表現。

まずは、錆を表現する専用塗料でテストを行ってみました。

 

錆塗装の確認テストの為、剣の狩人証で実施。

 

かなりいい雰囲気なのですが、爪でこすると塗膜が簡単に剥がれてしまうため、残念ながら不採用となりました。

 

シンプルに考えます。

ゲーム中ビジュアルでは地金が銅のように見えるので、試しに銅で鋳造してみました。

 

左:銅で鋳造後、ウェザリング 右:銅で鋳造

 

汚し塗装を加えても、どこか単調で、いまひとつなことがわかりました。

銅の色合いを活かしつつ、深みが出るよう工夫したいところです。

 

再びシンプルに考えてみました。

色に深みのある金属は、だんとつで銀です。ならば銅に銀を混ぜて、理想の合金を作ってしまおう。

左:銅70% 銀30% 右:銅80% 銀20%

 

割り合いを変えつつ、合金を作成。理想的な色を探します。
写真に写っているのは二種の配合ですが、様々な割合で試しました。(その中には、真鍮を加えるといったテストもおこなったりしています)

 

 

銅70%・銀30%の合金が、理想の色合いになることがわかりました。

作った後にわかりましたが、この配合は「四分一」またの名を「朧銀」(ろうぎん・おぼろぎん)という、既存の合金に限りなく近いものだったようです。
製品では、この特製合金を使って鋳造し、それを燻して磨き、造形の凹みには手作業でオレンジ系の塗料を差して、ゲーム中のビジュアルにより近づくように極限まで手を加えています。
※ ※ ※
ハードなイメージがありますが、美しい曲線と、アンティーク調の落ち着いた色合いによって、意外にもシックな雰囲気が漂います。
形状の修正、構造の再検討、オリジナル合金の開発、紆余曲折を経て完成した「撃鉄の狩人証」。じつはアクセサリーとしてもかなり使いやすいものになっています。ぜひお手に取っていただけますと幸いです。
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